薬歴の書き方について解説!
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薬歴について

「薬歴に関しては何となく先輩の薬歴を真似して書いているが、本来書かなければならない内容に関していまいちよくわからない・・・」

 

今回のテーマは「薬歴」です!

 

というのも、私が薬剤師として働き始めた頃は何となく先輩薬剤師の真似をしながら薬歴を書いていましたが、ちゃんとした薬歴の書き方や、書かなければならない事項などについて学んできませんでした。

実は現場で働いている薬剤師さんも、意外とちゃんとした薬歴の書き方を説明できる薬剤師さんは少ないと思います。

 

ですので私自身も改めて1から勉強し直してみることにしました。

従って今回は、正しい薬歴の書き方についてまとめました!

 

なぜ薬歴を書く必要があるのか?

薬歴は薬剤服用歴の略称です。

そもそもなぜ薬歴を書く必要があるのでしょうか。

過去に患者さんと話した内容や服用歴の記録として閲覧するためというのはもちろんですが、もう1つ大事なのが、調剤報酬請求をする上で薬剤服用歴管理指導料の算定要件の1つとなっているからです。

すなわち、薬歴を書かなければ薬剤服用歴管理指導料を算定することはできません

○ 薬剤服用歴の記録は患者情報を集積したものであり、適切な服薬指導を行うため には必要不可欠なものである。
○ 処方箋の受付の都度、患者情報を確認し、新たに収集した患者の情報を踏まえた 上で、その都度過去の薬歴を参照した上で、必要な服薬指導を行う。
○ 薬剤服用歴の記録は、調剤報酬請求(薬学管理料)の根拠となる記録である。
○ 薬剤服用歴の記録への記載について、指導後速やかに完了させるとともに、同一 患者についての全ての記録が必要に応じ直ちに参照できるよう患者ごとに保存・管 理する。
○ 疾病に関する一般的な生活指導は薬学的管理とは言えない。

 

厚生労働省の資料による「保険調剤の理解のために:薬局(令和3年度版)」においても、薬学管理料の項目で指導内容の要点等を必ず薬剤服用歴の記録に記載することとされています。薬学管理料を算定したのであれば、その算定をした根拠を記録する必要があります。
(厚生労働省ホームページの「保険診療における指導・監査」より資料を閲覧できます)

 

つまり薬歴はただ患者さんとの話した内容を記録しておくだけではなく、決められた項目に沿った情報をしっかり患者さんから徴収し記録しておく必要があります。
従って、薬剤師はどのような情報を記録すべきかを把握しておく必要があります。

 

 

ここで、「薬歴は多少不備があっても調剤報酬は支払われるから問題ないのでは?なぜそこまでしてしっかり記述する必要があるのか?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

実際にレセプトを作成して保険請求すれば、レセプトに問題がなければ医療費は支払われます。しかし、厚生労働省からの個別指導が入った際に不備が多いと厳しい指導を受けることになります。場合によっては、薬学管理料を算定する要件に満たしていないと判断され、保険料の返還をしなければならないこともあります。

このような事態を避けるために、保険薬剤師は薬歴をしっかり記録しておく事が大切です。

 

 

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薬歴を記載する際の必要事項について

薬歴に関しては基本的には前述した、「保険調剤の理解のために:薬局(令和3年度版)」の資料に沿って記録しておけば問題ありません。

今回はこの資料に沿って話を進めていきたいと思います。

薬剤服用歴管理指導料における、薬剤服用歴の記録に必要な記載事項として以下にように書かれています。

(記載事項)
ア 患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先)
イ 処方及び調剤内容等(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、調剤日、調剤した薬剤、処方内容に関する照会の要点等)
ウ 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向
エ 疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。
オ 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況
カ 服薬状況(残薬の状況を含む。)
キ 患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)及び患者又はその家族等からの相談事項の要点
ク 服薬指導の要点
ケ 手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無)
コ 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点
サ 指導した保険薬剤師の氏名

 

内容に関して簡単に下記にまとめます。

ア 患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先)
新患アンケートなどで情報収集、また保険証は月に1回確認するのが一般的です。

イ 処方及び調剤内容等(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、調剤日、調剤した薬剤、処方内容に関する照会の要点等)
処方箋の内容を記録します。一般的には処方箋受付時に入力したデータがそのまま反映されます。

ウ 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向
アレルギー歴や副作用歴、またジェネリックに関する意向などを記録します。このため定期的に患者さんの体質や生活像の情報収集が必要となります。

エ 疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。
現在治療中の疾患や、過去の既往歴、合併症などに関する情報を記録します。
オ 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況
併用薬に関しては、OTCやサプリメント、飲食物、お酒、タバコなどに関しての記録も含め記録が必要となります。
カ 服薬状況(残薬の状況を含む。)
コンプライアンスを確認し、残薬の状況なども記録します。
キ 患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)及び患者又はその家族等からの相談事項の要点
医薬品の効果の状況や、副作用の確認などを行い、患者さんからの相談があればその相談内容も記録が必要です。
ク 服薬指導の要点
服薬指導の要点を記録する必要があります。
ケ 手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無)
手帳を持っていたか持っていなかったかを記録し、手帳を使用していなかったときはその理由を記載する必要があります。
コ 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点
薬歴は次につながる内容でなければならないとされています。従って次回どのような指導や確認が必要かなどの内容を記載する必要があります。
サ 指導した保険薬剤師の氏名
指導した薬剤師の名前を記録しておきます。

また、ウ〜キに関しては、薬剤師が薬を取り揃える前に患者さんに確認する事とされています。

 

ここで、薬歴は患者に属する基本的な情報を記載する部分(表書き部分)と、処方内容に伴う経過的な情報を記載する部分を作成する必要があります。

表書き部分に関しては、患者さんの基礎情報(既往歴・副作用歴・アレルギー・併用薬など)を容易に確認できるようにしておかなければなりません。そして表書き部分の基礎情報は、定期的に服薬指導時に確認して更新していく必要があります

 

薬剤服用歴への記載は指導後速やかに完了させ、最終記入日から3年間保存する必要があります。

 

SOAP形式の薬歴

SOAP形式を取り入れている調剤薬局も多いかと思いますが、薬歴は必ずしもSOAP形式でなくてもかまいません。ちなみに私が以前勤めていた大手調剤薬局はSOAP形式ではありませんでした。

 

そもそもSOAP形式の薬歴とは、

S:Subjective(主観的情報)
患者さんの主観的な情報であり、患者さんの訴えや悩みなどを記載します。

O:Objective(客観的情報)
副作用やコンプライアンス、検査値など、薬剤師が客観的に得た情報を記載します。

A:Assessment(評価)
SとOの情報を元に問題を評価し、解決のためのプランを考察します。

P:Plan(プラン・支援計画)
問題に対する解決方法や、フォローすべき内容、指導内容などを記載します。

 

これらの頭文字をとって「SOAP」と呼びます。
一般的にこの形式で薬歴を記録している薬局が多く、服薬指導の要点などがまとめやすくなります。

必ずしもSOAP形式でなくても構いませんが、他の薬剤師さんが薬歴を見た際にすぐに患者さんの背景や服薬指導の要点などが分かるような薬歴を残しておく事が大切です。

 

服薬指導と薬歴

これまで薬歴を記載する上での必要事項に関して前述しましたが、あくまで大切なのは服薬指導です。

記載しなければならない項目は多いですが、その薬歴を残すためにもしっかりと患者さんと向き合い情報収集する必要があります。それだけ薬剤師がしっかり患者さんのことを把握した上で服薬指導を行わなければならないという意味でもあります。

薬剤師の業務が対物から対人へと言われている中で、充実した薬歴を残していくことも今後大切になっていくのではないでしょうか。

 

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