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「数量シェア」の計算方法について
「数量シェアってよく聞くけどいまいちどういう計算が行われてるのか分からない・・・」
調剤報酬に関する点数が年々厳しくなる中、後発医薬品調剤体制加算を取るために日々後発品(ジェネリック)への変換に努めている薬局も多いかと思います。
2020年4月の調剤報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算は以下のように定められています。
後発医薬品調剤体制加算1・・・後発医薬品の調剤数量が75%以上
後発医薬品調剤体制加算2・・・後発医薬品の調剤数量が80%以上
後発医薬品調剤体制加算3・・・後発医薬品の調剤数量が85%以上
後発医薬品減算・・・後発医薬品の調剤数量が40%以下
この調剤数量の割合を計算する上で考える必要があるのが「数量シェア」です。
ここでは数量シェアがどのように計算されているのかをまとめていこうと思います。
数量シェアとは
数量シェアとは「置換え率」とも言われ、どの程度後発医薬品が使われているかの割合になります。
計算式にすると以下のようになります。
ここで、数量とは何を基準に考えるのかを解説していこうと思います。
数量とは
現在の国の基準では、後発品への変更割合を計算する上で用いられているのは金額ではなく数量が用いられています。
数量とは単に「何錠変換したか」という事なのですが、医薬品は全てが錠数ではなく「枚数」で処方される医薬品もあれば「g」で処方される医薬品もあります。
つまりこれらをすべて合算して計算しなくてはなりません。
ここで、数量の計算には薬価収載における規格単位が使用されています。
つまり、その医薬品の薬価が1錠単位で定められているか、g単位か、個数単位かということです。
薬価基準収載品目リストは以下の厚生労働省のサイトに掲載されています。
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和3年2月18日適用)
上記サイトでは「内用薬」「注射薬」「外用薬」「歯科用薬剤」と区分別に品目リストが掲載されています。
各一覧の「規格」部分の単位がどのように定められているかを確認します。
言葉で表現してもわかりづらいと思うので、実際にどのようにして数量が定められるか例をあげて考えてみたいと思います。
数量を考える上での処方例
⇒数量270
ムコスタは1錠単位で薬価が定められているため、3錠×90日分で数量は270となります。
⇒数量1
ヒアレイン点眼液は1瓶単位で薬価が定められているため、1瓶の処方であれば数量は1となります。
⇒数量5
同じ点眼液でも、アレジオン点眼液は薬価がmL単位で定められています。従ってヒアレインと同じ1瓶の処方であっても5mLであるので数量は5となります。
⇒数量200
ヒルドイドソフト軟膏は1g単位で数量が定められているため、200gの処方であれば数量は200となります。
数量の考え方についてはイメージできたかと思います。
次に、先発品と後発品の分け方について解説したいと思います。
先発品と後発品の見分け方について
どれが先発品でどれが後発品なのかが混乱する事があると思います。
これは先程の薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和3年2月18日適用)により確認することができます。
上記サイト内の「5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)」項目に後発品有無についての品目一覧がExcelかPDFの形式で掲載されています。
この一覧表で見るべき箇所は、「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」の部分です。
ここで、1・2・3・☆・★ などと分類されていて、上記サイトにもそれぞれの説明がありますがここで簡単にまとめたいと思います。
1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)
2:後発医薬品がある先発医薬品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。ただし、全ての後発医薬品が経過措置として使用期限を定められている場合を除きます。後発医薬品と同額又は薬価が低いものについては、「☆」印を付しています。)
3:後発医薬品(先発医薬品と同額又は薬価が高いものについては、「★」印を付しています。)
昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品及び平成30年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分については、「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」は空欄となっています。
1:後発医薬品がない先発医薬品
新薬などは特許が切れるまでは後発品が発売できないのでここの区分となります。
新薬でなくても後発品が存在しない先発品もあります。
(例:デエビゴ錠 ヤーズ配合錠 エピデュオゲル など(2021年2月現在))
2:後発医薬品がある先発医薬品
後発品(ジェネリック)をもつ先発品のことです。
ここで先発品であっても、薬価が高い後発品を持つ医薬品には「☆」が記されています。
(例:アムロジン錠2.5mg ムコスタ錠 アフタッチ口腔用貼付剤25μg(☆) など(2021年2月現在))
3:後発医薬品
後発品(ジェネリック)のことです。
ここでは、後発品であっても先発品より高い値段が設定がされているものには「★」が記されています。
(例:アムロジピン錠2.5mg「サワイ」 レバミピド錠100mg「EMEC」 アフタシール25μg(★) など(2021年2月現在))
その他
その他、空欄となっている部分は、
・昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品
・平成30年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分
のいずれかに分類されており、空欄の部分は数量シェアの計算からは除外される区分となります。
従って、数量シェアを考える際は上記の2と3の部分を用いて計算するということになります。
後発品が存在するかどうかを確認する裏技
インターネット上で規格単位、また後発品かどうかを調べる簡単な方法があります!
お薬110の「ハイパー薬事典」にて医薬品を検索
おなじみのお薬110番です。実はこのサイトに規格単位と先発か後発の区分が記載されています。
調べたい医薬品を検索して選択します。
一番上の「製品例」部分の右側「その他(ジェネリック)&薬価」という部分を選択。
すると同成分の一覧が表示されており、ここで規格単位と後発品の有無が確認できます。
ちなみに、わざわざハイパー薬事典に毎回アクセスするのが面倒だという方は、Googleで検索する際に「医薬品名 110」と、スペースを一つ空けた後110という数字を加えると一番上に出てくる事が多いです。
後発品については本来であれば厚生労働省のサイトで確認するのが確実ではありますが、こういった検索方法もあるので紹介しました!
実際に数量シェアについて考えてみましょう
これまでの内容を踏まえた上で、数量シェアについて考えてみましょう!
この式を踏まえた上で具体的な処方例を用いて数量シェアの考え方を見ていきましょう。
例えば、上記のような処方が来たとします。
ムコスタは後発品のある先発品なので、レバミピド錠へ変換したとすると数量42となります。
また、上記のような処方箋が来たとします。
この場合、ヒアレインをヒアルロン酸へ変換した際、数量1となります。
ここでお分かりのように、ヒアレイン1瓶の処方箋を42枚後発品にするのと、ムコスタ14日分の処方箋1枚を後発品にするは同じ数量となります。
この場合、ヒルドイドを後発品に変更することで数量200の後発品への貢献が可能な訳です。
裏を返すと、後発品に出来なかった時は数量シェアの数値を大きく下げることになります。
毎食後 7日分
上記の例で言うと、後発品であるカルボシステイン500mgとすること3錠×7日分で数量21となります。
ここで、後発品へ変更する際、規格を変更する事ができます。
従って「ムコダイン錠500mg 3錠」 は「カルボシステイン錠250mg(後発品) 6錠」へ変更する事が可能ですので、もしこのように企画変更をして調剤をを行った場合、数量42となります。
少しでも数量シェアを上げていきたい場合このような変更をすることができます。
本来は医療費を削減させるために先発品から後発品への推奨を行うものですが、前にも述べたように現在では数量シェアによって後発医薬品調剤体制加算が変わってくるため、薬局経営を考える上では数量シェアを上げていく事は非常に大切となってきます。
このように数量シェアを上げていきたい場合は、どのような処方の際に後発品への変更推進に力を入れるべきかを考えることも大切となってきます。
数量シェアの計算はいつから?
新たな後発品が薬価収載される際、いつから後発品として数量シェアの計算に入れて良いのかという問題があります。
後発品は発売日から「3:後発医薬品」として扱われます。
その先発品は発売された翌月1日から「2:後発医薬品がある先発医薬品」として扱われます。
いかがでしたでしょうか。
今回は数量シェアについて解説致しました。
数量シェアは基本的には機械的に計算されますが、どのような計算が行われているのかを知っておくのも大切です。
少しでも皆様のお役に立てれれば幸いです。